稲田 有作(第39期)

近 況 報 告

神戸市立西神戸医療センター 
研修医2年目     
稲田 有作(第39期)

 

稲田 有作(第39期)

 島根大学医学部医学科同窓の先生方、はじめまして。私は、医学科39期卒業生(2020(令和2)年卒)の稲田有作と申します。現在、兵庫県の神戸市立西神戸医療センターという中規模の急性期病院で研修医2年目として勤務しております。
 大学卒業から現在に至るまでを回顧して思い浮かぶのは、楽しかったことよりもむしろ困難に立ち向かったことの方が多いように感じられます。2020年初頭に中国湖北省・武漢で発生した新型コロナウイルス感染症が日本でも猛威を振るい、厳戒態勢の中行われた医師国家試験を突破し、海外を予定していた卒業旅行先を国内に変更するなど、想定外の事態に見舞われながら医師としてのスタートを切りました。例年院内で行われている新人歓迎会も当然中止となり、上司となる先生や病棟、手術室等の看護師さんの顔も全く分からず、苦楽を共にすることとなる9人の研修医同期とも飲みに行って親睦を深めることもできませんでした。5月から始まった救急外来での当直業務では、嵐のように次々と来院する胸痛や腹痛をはじめとする緊急疾患の鑑別に苦心する傍らで発熱患者の鑑別には特に苦戦を強いられました。たとえ主訴が何であっても、発熱や呼吸器症状があればfull PPEを装着して汗だくになりながら必死に戦い続けました。これはコロナ禍が多少の落ち着きを見せている執筆当時(2021年10月)でも同様です。さらには、コロナ禍による受診控え、あるいは待機手術の延期により研修医として経験できる症例が通常より少なくなってしまったことも憂慮されます。
 ここまで、コロナ禍において大変だったことを列挙してきました。一見、とんでもない不幸なタイミングで医師人生が始まったように見えます。しかしながら、卒業時に行けなかった海外旅行に関しては、将来お金を稼いでから思いっきり楽しもうという夢が出来ました。院内のスタッフの方々の顔と名前を覚えるために、より積極的にコミュニケーションをとるようになりました。救急外来においては、発熱や咽頭痛、呼吸器症状を訴える患者の鑑別疾患に習熟したり、感染症パンデミックにおける水際で戦ったりと貴重な経験をすることができました。そして、気軽に飲みに繰り出せない状況だからこそ、普段の何気ない日常にありがたみを感じることも出来ているのではないかと思います。これらは、コロナ禍に見舞われたからこそ得られたものだと思っています。自分の身に降りかかった災難も、視点を変えて眺めると、自分の成長の糧となり得るものであることに気付きます。 ある歌の一節にも、『幸せと不幸せなんて 気持ち次第で変わってくから』とあります。これから続く長い医師人生において、困難や逆境に立ち向かわねばならない瞬間が数限りなく訪れることと思います。そのたびに、ピンチをチャンスに変える、難局を自分が成長するための足掛かりにするんだという心意気で、一歩一歩精進して参りたいと思います。
 最後になりましたが、島根大学医学部医学科同窓の先生方の益々の御多幸と御健勝を祈念して、近況報告とさせていただきます。ご清覧いただきありがとうございました。

 

 

 

萌雲会 さくら会 思い出写真集