
佐久総合病院 佐久医療センター
心臓血管外科 医長
新津 宏和(第28期)
同窓会の皆様こんにちは。出雲で船を買って釣り三昧な人生を楽しみたいと思ってから、早いものでもう十数年経ってしまいました。この度同窓会誌への寄稿の機会を頂きましたので、近況を報告させて頂きます。
私は長野県の佐久出身(海から最も遠い地点)で、浪人時代を東京で過ごした後に島根医科大としての最後の入学生として出雲での生活をスタートしました。大学時代は野球、スキー、ウインドサーフィン、自動車部と多くの部活に参加し先輩、同期、後輩と貴重な青春時代の経験を共にしました。暇だったのでしょうか、島根県全域を隈なくドライブしていたような記憶もあります。また出雲で覚え、現在まで継続している趣味としてエギング(ルアーでのアオリイカ釣り)があります。以前からイカが好きだったのですが、手軽に海でイカが釣れると教えてもらってから始めは食糧確保の目的で釣りに通っていましたが、徐々にその面白さに魅了されてしまいました。学生時代は海も近くいつでも釣りに行けたのですが、現在は日本海からも太平洋からも一番遠い地点に住んでいるため、年に数回程度しか海を見ることができません。隠居したら船を買って出雲で自由に釣りでもしたいものです。
大学卒業後は地元である長野県の佐久総合病院に初期研修医として就職し、その後は外科ローテーションの後、心臓血管外科の道に進むことに決めました。卒後6年目に外科専門医試験の面接が東京新宿であり、思っていたより外科に進んだ多くの同期と久しぶりの再会をしました。それぞれの専門分野に進み頑張っている同期の話を聞き、非常に刺激を受けたのを覚えています。試験後には学生時代に大変お世話になった「炉端かば」新宿店で打ち上げをし、出雲を思い出しながら酒を酌み交わしました。
現在は病院の分割移転により佐久医療センターに勤務をしています。最近は島根大出身の初期研修医が数年に一人くらいのペースで来るので密かな楽しみにしています。心臓血管外科としては長野県内では症例数も非常に多く、市中病院としては稀ですが、植込み型補助人工心臓や3D内視鏡を使用した小開胸やカテーテルによる低侵襲心臓血管手術も積極的に行っています。また2016年には1年数か月の海外への臨床留学の機会を得ることが出来ました。留学先はタイの北部にあるランパーン病院というところでした。ランパーンは首都バンコクからは北に600Km、飛行機で1時間半ほどのところにある街でありタイの古都として500年ほど前に栄えた場所です。小さな地方都市ですが、タイ国内で唯一今でもなお馬車に花飾りをつけた「花馬車」が走っており、ノスタルジックな印象を残す街です。日本人が観光に訪れることはあまりない街ですが、機会があればおススメします。病院はタイ北部数県、ミャンマーなどの患者をカバーしており、胸部心臓血管外科のスタッフ数は少ないながらも手術数は年間1000例を超えていました。英語も通じないようなタイの田舎へ単身赴き不安でしたが、当時その病院初の日本人フェローとして温かく迎えられました。私個人としても多くの執刀機会を与えられ、人間としても外科医としても成長をすることが出来たと実感しています。帰国後も日々忙しい毎日を送りながら、家族との時間も大切にし、医師としての研鑽を積んでいます。
毎年同窓会誌が送られてくると各方面で活躍されている皆さんに刺激を受けるとともに、大学時代の苦楽を共に過ごした同窓生との思い出や出雲での沢山の記憶が蘇ってきます。コロナ禍でなかなか会えない、飲み会もできない日が続いていますが、いつの日かまたみんなで再開できる日を楽しみにしています。最後になりますが、同窓会の皆様の益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます。
写真:タイ寺院前で花馬車と